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今日の世界 明日の文明

今日の世界 明日の文明  新たな平和のシルクロード

河出書房新社 2007年
トルコ出身のヤーマン博士は「イスラムを深く知る」文化人類学者であり、ハーバード大学中東研究センター所長などを歴任した。1992年に池田名誉会長と対談。93年に名誉会長がハーバード大学で2度目の講演を行った際には、同大学の文化人類学部長として講演の招へい者に名を連ねるなど、交流を重ねてきた。
暴力の応酬が横行する「今日の世界」で<憎悪と敵意の連鎖>をいかに打開するか――。人間の生活から遊離した攻撃的な「狂信主義」、極端な「宗教主義」に対して、名誉会長と博士は、鋭くメスを入れる。文化人類学を「他の人びとを理解しようとする試み」と定義するヤーマン博士と、偏見や先入観にとらわれず、「同じ人間」として人々と交流することを信条とする池田名誉会長は、「開かれた対話」の重要性で共鳴する。
一方的なアイデンティティーの主張ではなく、宗教や文化の基底にある共通の倫理や道徳に着目し、互いの差異を認め合い、多様性を尊重するところに「明日の文明」の開花がある――。国連の改革や、共感性を育む教育の在り方が真摯に検討され、イスラムと仏教の共通性や、トルコと日本の文化的親近性が、事実に即してわかりやすく紹介される本書。仏教と文化人類学を代表する知性が、「明日の文明」の基調となる<普遍的ヒューマニズム>の確立を目指して語り合う、貴重な対話の記録となっている。

ヌール・ヤーマン  文化人類学者 ハーバード大学教授
文化人類学者。ハーバード大学教授。1931年トルコ生まれ。ケンブリッジ大学卒業。同大学で文化人類学の博士号を取得。シカゴ大学の社会人類学教授を経て、1972年からハーバード大学教授。1973年から76年まで同大学の中東研究センター所長を務める。インド、スリランカ、トルコ、イランなどでフィールドワークを行い、イスラム教や仏教、ヒンズー教など、宗教と社会の関係の研究でも著名。
ヌール・ヤーマン

第1章 トルコと日本 響きあう心
「地球民族」の調和を求めて/東と西の文化が出あうイスタンブール/トルコでも“風呂敷”をつかう/トルコの野草だったチューリップ/日本でも有名な原爆詩/女性を尊重する社会が繁栄する/「定価」のない社会/日常とむすびついた宗教行為/仏教は平和の推進に挺身する宗教

第2章 友情は国家と時代を超えて
歴史の真実を語ることが真の友好に寄与/友情の原点となった感動のドラマ/驚くほど似ているトルコ語と日本語/「ことわざ」の豊かな国/素早い行動力こそ勝利の要諦/親日的なトルコの人びと/国益よりも人類益に立脚した行動を

第3章 内に平和を! 外に平和を!
奇跡を成し遂げたケマル・アタチュルク/古き友人を大切にし、新しき友人をつくれ/イスラム国家における政教分離/教育こそ、人間と人間をむすぶ/イスラム世界でのアタチュルクの評価/戦いに勝ったトルコには独裁者が登場しなかった/地球的パートナーシップこそ21世紀のカギ

第4章 「理解の心」から「豊かな世界」を
平和を愛する心を伝える文化の大使/笛の音は、真理を愛する賢者の心の声/他の人びとを理解しようとする試み/支配する側の知の体系/グローバル化が文化の画一化ではいけない/「野蛮」という偏見を打ち破った文化人類学/知の巨人レヴィ=ストロース/文明の“未開”と“進歩”の考えを批判

第5章 「対立」から「共存」へ! 「衝突」から「交流」へ!
「対立」を乗り越え「対話」の方向へ/文明の単純な類型化に伴う危険性/グローバリゼーションの「挑戦」と諸文化の「応戦」/「理解の欠如」が生む偏見/ナショナリズムが「宗教」や「民族」を道具に/一人ひとりの日々の生活に焦点を

第6章 他者と出会う 共に生きる
先入観を打ち破るフィールドワーク/憎しみは憎しみによって断つことはできない/土着文化と共存する仏教/現実の苦しみを解決する宗教/「対話」の必要性を実感/「一人」で多文化のなかへ入る意味/「共感」を育むことが大切/若さの傲慢、富の傲慢/ハードでなくソフト・パワーの時代を

第7章 生命を譲れ! 対話の潮流を
生も歓喜、死も歓喜/死を無視する態度が生んだメガデス/他宗教が共存したオスマン帝国/サッカーの声援「オーレ」の由来/平等がイスラムの中核的精神/イスラムは「愛」を重視/世界を導く「生命尊厳の哲学」

第8章 世界をつなぐ――国連改革の道
“平和のネットワーク”に期待/“平和の絆”を基に分断から結合へ/「狂信主義」こそ克服すべき課題/揺らぐ「個人」がよって立つ基盤/グッド・ガバナンスを地球レベルで拡大

第9章 「対話」こそ文明の大憲章
日本と中国の新たな平和友好の道を/現代に必要なコスモロジーの復興/宗教間対話を可能にする条件/創始者の精神に立ち返れ/集団の絶対視が生んだ20世紀の悲劇/「野蛮のマグナ・カルタ」から「文明のマグナ・カルタ」へ

第10章 人間教育の新しき大道を
多様な文明の融合は英知の揺藍/“人びとを戦争へと駆り立てる教育”の危険/他者への配慮の心を育てる「共感への教育」/共生の世界を目指して歴史の再考察を/教育と宗教は社会を支える両論/歴史を動かす出会いと創造を求めて