識者の声

澤良世氏

元ユニセフ広報官
澤良世氏

「人間」「女性」に光当てる哲学

『人間革命』『新・人間革命』からは、創価学会の歴史や思想など、さまざまな事柄を知ることができます。

まず歴史において、私は学会の「二つの出発点」に強い関心を持ちました。一つは、教育を根本にして出発した点です。教育は普遍的な価値であり、創価学会の原点がそこにあることは、その思想と運動の普遍性につながっていると思います。

二つ目は、その哲学が、戦争の経験から出発した点です。戦争の悲惨さは、忘れてはならない歴史です。この一点が中心にあるからこそ、学会の平和運動はゆるぎないものになっているのでしょう。

『人間革命』に綴られる思想・哲学に関して言えば、「人間主義」「女性を大切に」との信念に強く惹かれます。ユニセフの広報官として、長年、子どもたちのための活動に携わってきました。その間、「国の安全保障」から、「人間の安全保障」に重きを置く時代へと、大きな転換期を迎えました。『人間革命』は人間主義の哲学に貫かれ、どこまでも一人の人間に焦点を当てています。これは、「人間の安全保障」の重要性を先取りした思想であり、その先見性に敬服いたします。

また、執筆が開始された1964年は、経済復興に伴い、ユニセフからの援助が前年に終了し、日本が新たな一歩を進み始めた年です。新幹線が開通し、東京オリンピックも開催されました。私には、『人間革命』の執筆には、経済一辺倒で発展する日本への、「“人間”を忘れてはならない」との警鐘の意味もあったのではないかと思えてなりません。

現在、聖教新聞で「母の詩」の章が連載されています。以前、創価学会の女性たちの平和活動について書かれた小冊子を読んだ時、「ゆりかごを動かす手が世界を動かす」との言葉を発見し、大変に感動しました。こうした言葉も、池田名誉会長が女性の持つ偉大な力に着目し、讃え続けてきたからこそ生まれたものなのでしょう。

私には、多くの創価学会の友人がいます。皆さん素晴らしい方で「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」との理想に燃えた、“『人間革命』の実践者”であると強く感じます。

今後も、『人間革命』の連載が更に続くとともに、その思想と行動が大きく広がりゆくことを心から祈っています。
(2010年11月)